幼い頃の記憶(小学館の名作文芸朗読)
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著者:
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一七歳、秋のはじめ―― 部屋は四畳、明窓の障子の向こうには二畳ばかりの池がある。何百年もの古邸であるから、鼠だらけ、埃だらけ、草だらけ。塾生と教師家族が住んでいる。その夜は、塾で禁止されている小説をひっそりと読んでいた。すると、障子の向こうでぱらぱら…と音がした。耳を澄ますと、連続した調子で、ぱらぱら… 四五日後、風の黄昏時。家内には他に誰もいなかった。惡寒のために床に就いていると、枕元でばたばた…と音がする。頭を上げたが、誰が来たのでもなかった。しばらくするとふたたび、しとしと…しとしと… 堪えられずに起き上がり、次の間、広間へと出た。ほっと息をつき振り返ると、部屋の敷居をまたいで、薄紅のぼやけた絹に搦まって、蒼白い女の脚ばかりが歩行いて来た。
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<内容紹介>
私は汽車の中で旅僧と居合わせた。話を聞くと高野山に籍を置いている旅僧で、宗派は違うが永平寺に訪ねる用があり、今晩は一泊するという。私は若狭へ帰省するところで、一泊しなければならなく、旅僧と敦賀の旅籠屋で同宿することになった。私は夜が更けるまで寝ることができない質なので、旅僧に諸国を行脚したおもしろい話はないかとねだった。 すると、旅僧は若い頃の奇妙な体験談を語りだし、それは、旅僧が飛騨の山越えをした時の話であった。
私(旅僧)は喉が渇き茶屋に入ったところ、付近で恐ろしい病が流行っていることを思い出した。茶屋の女にこの水は井戸のか、それとも川のかと訪ねたところを富山の薬売りに聞かれ、薬売りは「女ができないからと坊主になって、でも生命がほしいんだな。生命が危なくなったら薬をやるよ。」と馬鹿にされた。私は逃げ出し、むやみに急いでいると、先程の薬売りが無言でわざとらしく私を追い越し、危ない旧道の方へさっさと行ってしまった。見殺しには出来ないと思い、薬売りを追いかけることにした。蛇に苦戦した後、目の前に大森林があらわれ、森に入
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「高野聖」の作家、泉鏡花は明治後期から昭和中期まで活躍した、非常に個性的な非現実的な世界を描いた作品を発表した作家として知られている。「高野聖」も、一人の青年が宿で一緒になった老僧から聞いた修行時代に経験した世にも不思議な物語-彼が飛騨の山越えをした時、大蛇が何匹も横たわったり、蛭が襲って来る林を命からがら抜け出した時、一軒の山家で豊満な身体を持つ美女に誘惑されかかると云う物語で、鏡花の代表作の一つ。
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著者: 泉 鏡花
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